太古の昔から人類は生活に利用していた

「遠赤外線」という言葉が定着したのは、たかだか数年のことです。

十数年前までは遠赤外線といわれても「何、それ？」といった
程の認識しかありませんでした。

しかし、遠赤外線という言葉は知らなくても、人類は太古の昔から
遠赤外線を上手に生活に利用してきているのです。

ニュートンが重力の法則を発見する前から、この世に重力が存在して
いたように、遠赤外線もまた存在していたのです。

ただ、遠赤外線によって引き起こされる現象が遠赤外線によるもの
だということを知らなかっただけのことなのです。

私たちが遠赤外線という言葉を使っていない頃から、人間は遠赤外線

の恩恵に預かってきました。

身近なところでは、石焼き芋とか天津甘栗があります。

石を温めてから芋や栗を焼くと、芋や栗の表面をあまり焦がさずに、

それでいて内部までよく焼くことができます。

これは、遠赤外線の働きを利用したものです。

料理に土鍋を使ったり、肉や魚を石の上に乗せて焼くのも遠赤外線の
熱を利用したものです。

温泉地へ行くと、温泉だけでなく、砂風呂た岩風呂が体を気持ちよく

させてくれます。

これも遠赤外線効果を利用したものです。

石焼き芋，天津甘栗にしても、砂風呂や岩風呂にしても、
いずれも砂や石を加熱したもので温めるという共通点があります。

焼き肉や焼き鳥は炭焼きが一番美味しいといわれます。

炭で焼くと、炭の表面に灰が薄くできます。

この灰の中に含まれている酸化物から出る遠赤外線が、牛肉や鳥肉
の中まで熱を通すのです。

また、石を温めて布でくるみ、体の患部に当てて病気を治したり、
痛みを和らげることも行われてきました。

これも、体の内部を温め、血のめぐりをよくする遠赤外線の働きを
利用したものです。

気の合う人のことをよく「波長が合う」という言い方をしますが、
太陽の光の中で人間と最も波長の合うのが遠赤外線なのです。

20世紀後半になって、ようやくそれに気づいた人間は、砂や石の代わりに
酸化アルミナ、酸化ケイ素といった金属酸化物を粘土で固めて、焼結して
作ったセラミックスを開発しました。

このセラミックスの登場によって、遠赤外線は一躍脚光を浴びることになったのです。

医療の最前線で利用される遠赤外線の温熱効果

人類は昔から太陽を崇め奉り、健康のために日光を浴び、病気治療の一環として
取り入れてきました。

日光を浴びて病気を治すという日光療法が近代医学に取り入れられたのは
20世紀初頭のことでした。

1902年、ベルンハルト博士がスイスのサンモリッツの標高1720メートルの山上
に病院を開き悪性肉芽腫を日光照射で治療したのが、最初の記録として残されています。

その後、日本でも“不治の病”といわれた肺結核の治療施設として高原に日光照射
を目的とした療養所が作られるようになり、結核の治療に大きな業績を残してきました。

日照時間の短い北欧の国では、太陽に変わる人工の光を求めて人工太陽灯が開発され
ました。

最初に登場したのは紫外線を多く含んだ「人工高山太陽灯」でした。

次いで「水銀蒸気灯」。

さらに、より効果的な「水銀蒸気石英灯」が開発されました。

デンマークのフィンゼンは、これを改良した太陽灯「フィンゼン灯」を開発し。皮膚
結核を絶滅させました。

この功績が高く評価されてフィンゼンはノーベル賞を受賞しています。

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